社長とキャバクラに行くことにも慣れ、

月に1回は定期的に遊びにいくようになりました。

 

とはいえ、やはり社長と一緒ということで多少なりとも緊張していたわけです。

1回遊びに行けば20時から25時、26時になることも珍しくないので、

自然と何十枚もホステスの名刺が溜まっていきます。

 

勿論、中には

「うわっ!この娘カワイイ!!」

って思ったホステスが何人もいますが、

社長のお金という手前、とても指名なんかできません。

 

よく社長に

「気に入った娘はいたか?」

と聞かれましたが、

「みんな素敵ですよ。」

としか答えられませんでした。

 

なので半ば次に付く娘は当たりか、ハズレか?

というゲームに切り替えていたわけです。

 

 

ある日、僕に付いた娘が新人のようで、

正直あまりタイプではなかったんですね。

向こうも何か緊張しているし、僕も酔っ払っていました。

 

加えていつもフリーで入っているので、

何十回聞かれたか分からない、

「何歳ですか?」

「お仕事は何をしているんですか?」

「今日はどこかで飲んで来たんですか?」

「お2人はどういう関係なんですか?」

をまた繰り返すのかと考えたら、非常に面倒臭くなったんですね。

 

この時は一時的にキャバクラに飽きていました。

「そんな頻繁に行くもんじゃないな・・・」

と思ったのです。

 

隣に付く娘が変わるだけで、聞かれることは同じ。

かといって他人の金で指名なんかできないし、

一人で遊びに行くなんて勿体無いと思っていました。

 

なのでこの時は少し冷めていたんですね。

まともに返答する気がありませんでした。

 

「気に入った娘はいましたか?」

ああ、この質問も今日だけで4回は聞かれたなぁ・・・。

「あの人」

私は適当に目についた人を指しました。

 

嬢「え?どれですか?」

私「あの人だって」

嬢「え?え?ボーイしかいませんよ?」

私「その人だって」

嬢「ええっ!?男の人じゃないですか!?」

私「あの人のしなやかな指を見るとね、ドキドキするよ。ありゃあ人気高いんじゃない?」

嬢「え、あ・・・。ボーイの中では上の人ですけど・・・。」

私「やっぱりね。俺、見る目あるんだ。」

嬢「え・・・男の人に興味あるんですか?」

私「いや、全然。」

嬢「あはは!じゃあ何でですか~?」

私「目が合ったからさ。彼も俺を見て照れている。」

嬢「いや、1回もこっち見てませんでしたよね!?」

私「君は気付かなかっただろうけど、一瞬お互いにウインクしたんだ。」

嬢「あはは!愛し合ってますね!」

私「まあね、今日は彼とアフターしようかな。」

嬢「頑張って下さいね(笑)」

 

ってようなことをずっと真顔で言っていました。

この時は単純に面倒だったからです。

だから何を聞かれてもずっとこんな調子で答えていました。

 

過去記事にも結構書きましたが、

職業を聞かれて「刺身にタンポポを乗せる仕事」「ラーメン屋のサクラ」「牛乳配達」

とか答えだしたのも、この時からです。

 

年齢を聞かれたら、相手にまずは答えさせて

「実は還暦を過ぎている」と言ったり、

あまり飲まれてないですね?と聞かれたら

「これ二本目なんだ。そろそろ酔っ払うから気をつけた方がいいよ」

「どうなるんですか?」

「超能力使うよ。」

「やってみて下さい!」

「ちょっと待って・・・。ほらグラスの水滴が落ちた」

とか、そんなことばかり言っていました。

 

すると多くの客はカッコつける中で、私は奇異に映ったんでしょうね。

真面目に答える何倍も大きなレスポンスが返ってきました。

 

(これは面白い!)

やはり誰かの笑顔を見るのは楽しいものです。

 

馬鹿なことを言っているので、

向こうも面食らった後に作り笑いではなく、

大口を空けて笑ってくれるので私はそれが快感になってきました。

 

キャバクラでの楽しみを知ったことで、

私は社長と行くのが楽しみになっていました。

 

 

ある日社長がこんなことを言いました。

社「おい芦屋。俺、明日同伴することになったからお前とは店の前で会おうな。」

私「分かりました」

社「しかしつまらん奴だな。お前も同伴したらどうだ?」

私「いえ、私はそういう娘がいませんから」

社「じゃあ今から作れ。成功したら同伴代も俺が出してやる」

私「頑張ります(笑)」

社「お前ちょっと冷めてるからな~。その歳で女がいないなんて寂しいぞ?」

私「そうですね・・・。」

社「じゃあ今日は明日の約束を取り付けに行くぞ。仕事だと思え。」

私「ええっ!?」

 

そんなこんなで私はこの日も社長をキャバクラへ行くことになりました。

下手に真面目な私は『仕事だと思え』と言われると、

何としてでも成功させなくては!と思ってしまうのです(怒られるから(笑))

 

 

その日は3店行きましたが、約束どころかホステスに1回も切り出せていません。

どう考えても初対面の人と翌日同伴なんて、向こうも警戒するんじゃないかと思ったのです。

 

なので私は作戦を立てました。

『初対面が厳しいなら、その日に2回目を作ればいい』

 

私「社長!」

社「何だ?」

私「実は明日社長が同伴する娘の店に、私もお気に入りの娘が出来まして・・・。」

社「お!初めてだな!お前がそう言うの!」

私「はい!そこでもう一度その店に行って、同伴のお誘いをしたいのですが・・・。」

社「おお!いいぞ、いいぞ。よしもう一回行こう!」

 

これでその日のうちに初対面ではなくしたわけです。

とは言うものの、誰を指名しようかなんか決めていません。

それにやはりタイプではない娘と同伴しても楽しめないのは事実です。

 

私はその『気に入った娘』の名刺を探すフリをして、

パラパラと今日貰った名刺を確かめ、急いで名前と顔を一致させました。

 

その中に一人、私が小学生の時に好きだった娘に顔が似ているホステスがいることを思い出し、

(名前合っててくれよ・・・!)

と祈りながらボーイに名刺を見せました。

 

どうやらちゃんと合っていたようで、数時間振りの再会を果たしました。

問題はどうやって同伴に誘うかでしたが、

ここまで頭が回らなかった私は単刀直入に、

「明日同伴しようぜ!」

と言ってみました。

 

ダメならダメで社長に笑われるだけで、自分の時間は潰れないからな。

と後ろ向きだけど前向きに(?)考えることにしました。

 

すると

「うん、いいよ。」

とあっさりOKを貰ってしまいました。

 

あれ・・・?とちょっと拍子抜けしましたが、

これで面子は保てたわけです。

 

しかし同伴なんてしたことがない私は一体どこに誘えばいいのか分からす、

とりあえず何が食べたいかだけ聞いて、帰ってからネットで探すことにしました。

 

 

閉店時間が過ぎて店の外に出た時、

「社長、私も同伴の約束を取り付けました」

と報告したら

「ホントか!やったな、芦屋!お前は出来る奴だと思っていたよ!いや~よかった!」

と喜んでくれました。

 

いつもはここで解散するのですが、余程私が同伴を取り付けたのが嬉しかったらしく、

「詳しく聞かせてくれよ!」

と焼き鳥屋に入ることになりました。

 

それだけでなく、最後にから揚げやらパンやらも買って貰って、

終始「やったな!」ばかり言って貰えたのが嬉しかったですね。

 

 

・・・ですが、あまりにも喜んだ社長は上機嫌のままタクシーに乗って帰宅してしまい、

「あれ?約束の同伴代は・・・??」

とその場でポツンと佇んでしまいました。

 

まあ良い記念にと、財布の中がちょっとヤバくなりながらも同伴を楽しんできました。

合流した後も社長は「やったな!」と昨日の続きのように言っていました。

 

こういう体験の末に、

キャバクラもゲームだと思えば非常に楽しいものだと思いました。

 

もともとは惚れるか、惚れさせるかのラブゲームなわけですし、

こうやって周りと同伴、アフター対決をしても面白いと思います。

 

ここから私は本格的にキャバクラが好きになりました。

そして一人でも行くようになったのです。

 

 

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